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bookmark_borderフリップフロップ(FF)②

前回記事はこちら

今回は前回紹介したD-FF回路(図 1)の動作を説明したいと思います。

D-FF回路の動作

図1

ラッチ内のASW(四角いブロック)の中は下の様になっていて、SW端子が‘H’でSWX端子が‘L’のときは、左側の列のTrがONし右側の列のTrがOFFするので、COM端子はA端子とつながります。逆にSW端子が‘L’でSWX端子が‘H’のときは、COM端子はB端子につながります。

図2

ラッチ内のINV(三角のブロック)はインバータです。

図3

図 1と図 3を使ってマスターラッチの動作から説明します。結構複雑な動きをします(汗)。

マスターラッチの動作

(A)CLKが‘L’の時(つまり、CLKXが‘H’の時):

ASWの端子Aと端子COMが接続し、入力Dが回路内に取り込まれます

このときD1,D1X,D1XXの状態が変化し、ASWの端子COMからインバータを

2個経由した端子B(つまり、D1XX)は、端子A(つまり入力D)と同じ論理になっています。

(B)CLKが‘H’の時(つまり、CLKXが‘L’の時):

ASWの端子Bと端子COMが接続し、前の状態をラッチします。

つまりD1、D1X、D1XXの正帰還状態となります。

この間、ASWの端子A(つまり入力D)が変化しても、ラッチ回路内は影響を受けません。

図4

続いて図 1と図 4を使ってスレーブラッチの動作を説明します。

スレーブラッチの動作

(マスターラッチとはCLKの接続が逆になっている事に注意して下さい)

(C)CLKが‘H’の時(つまり、CLKXが‘L’の時):

ASWの端子Aと端子COMが接続し、入力D1Xが回路内に取り込まれます

このときD2X,D2XX,D2XXXの状態が変化し、ASWの端子COMからインバータを

2個経由した端子B(つまり、D2XXX)は、端子A(つまり入力D)と同じ論理になっています。

(D)CLKが‘L’の時(つまり、CLKXが‘H’の時):

ASWの端子Bと端子COMが接続し、前の状態をラッチします。

このときはD2X,D2XX,D2XXXの正帰還状態となります。

この間、ASWの端子A(つまり入力D)が変化しても、ラッチ回路内は影響を受けません。

実はこの(D)になる時が一番危険な時なのです。

なぜかというと、“前の状態をラッチする”と“D1Xの変化”がほぼ同時に行われているからです。

安全にするには“前の状態をラッチした後、D1Xが変化する”ようにすれば良いので、

CLKの順番で言うと、

“スレーブラッチのCLKの立下り(CLKXの立ち上がり)の後、マスターラッチのCLKが立下る(CLKXが立ち上がる)”

となります。つまり、スレーブラッチのCLKがいつも早くなるようにしておけば良い事になります。

しかし、実際にはそう単純にはいかない事情があります。

次回はこのあたりをもう少し詳しく紹介したいと思います。

bookmark_borderAIモデルを開発する(AI×IoTトイレ見守り⑥)

AIと低コストのTOFセンサーの組み合わせが、人の検出や転倒検知などに利用できる可能性をPoC(Proof of Concept)の結果が証明しました。さて、次のステップは何でしょうか?それは、システムをPoCから実用製品へと発展させることです。

前回の記事はこちらです。

POC から製品化へ

このフェーズでは、主に「簡略化によるシステムコスト削減」と「インフラ」の2つの領域に焦点を当てていきます。

簡略化によるシステムコスト削減

①デバイス上での処理

注目したいのは、デバイス上での処理です。実は、AIモデルは32ビットのM4 Cortex MCU上で直接処理することが可能。これにより、コストを抑えつつも性能を高めることができます。 具体的には、STM32ビットM4 Cortex上のAIモデルは約41KBのFlashと約12KBのRAMを使用しています。AIモデルは量子化されており、float32モデルからint8ベースに変換されています。このおかげでAIモデルのサイズが削減されるため、32ビットMCU上での高速処理が実現できるのです。 またAIモデルの推論時間は約4msですが、センサーデータの読み取り、前処理、後処理をすべて含めると、1フレームのToFデータ処理にかかる時間は10~15ms。ToFセンサーのフレームレートが8Hzであることから、最も長くて1秒あたり120msの処理時間になります。処理時間の約88%の時間をMCUはアイドル状態になるため、その間、理論上は低消費電力モードやスリープモードに移行可能です。

②インフラ

一方で、システムの中でもっとも課題となるのが「インフラ」です。これには次のような要素が含まれます:

  1. 接続性(Connectivity)
    • システム統合に不可欠なBluetooth、UART、WiFiなど。
  2. 筐体
    • センサー保護(防水、防塵 など)
  3. 電源(Power)
    • バッテリー駆動または有線電源の選択肢。

システムの改善に向けて

現状のシステムは低コストのTOFセンサーを使用していますが、コストを最小限に抑えながら性能の向上や機能の拡張を目指す必要があります。特に、家具や設備が固定されている環境では、無人時に取得したキャリブレーションデータをAIモデルが活用できます。しかし、患者の移動式ベッドが動いた場合や、大型の物体がセンサー範囲に入って来る場合など、シナリオによっては想定外の事態が生じることがあります。

このような状況への対策として、以下のような解決策が考えられます。

  1. 低コストの高解像度ToFセンサーを使用する
  2. 複数のセンサーを使用し、データ融合を行う

低コストの高解像度ToFセンサーを使用する

2025年末には、解像度52×42の新しいセンサーが登場予定。このセンサーはスマートフォン向けに開発されるため、低価格での提供が期待できます。これにより、キャリブレーションデータなしでも体の部位を検出できる可能性が広がります。

上の画像は、60×45の高解像度ToFセンサーからダウンサンプリングした画像の一部を示しています。人物は 立位、膝立ち、座位、または倒れた状態 になっています。プライバシーの観点から見ると、顔は判別できず、また体の画像も十分な詳細がないため、プライバシー上の問題は生じにくいと考えられます。

複数のセンサーを用いたデータ融合を行う

サーマルセンサーには検出範囲の制限があり、またToFセンサーよりもコストが高く(3~5倍)別の課題があります。しかし、低解像度のサーマルイメージセンサーと低解像度のTOFセンサーを組み合わせることで、物体の温度情報を活用し、人間と非人間の物体を区別できるようになるかもしれません。これにより、システム全体の精度の向上が期待されます。

さらなるユースケースの探求

顧客が関心を持つユースケースはさまざまです。例えば、

  1. 患者ベッドモニタリング
  2. 温泉
患者ベッドモニタリング
温泉

これらのユースケースは、転倒検知や危険な姿勢の早期発見に焦点を当てています。たとえば、ベッドからの転落や温泉での居眠りなど、安全面を考慮したシステムが求められています。 高解像度センサーやハイブリッドソリューションを活用することで、プライバシーを保護しつつ、より高度な検出システムを構築できる可能性があります。これにより、AIとIoT技術が目指す未来の実現に近づくことができるのです。

bookmark_borderフリップフロップ(FF)①

今回から何回かに分けて、フリップフロップ(FF)について紹介していきたいと思います。以前のブログに“メタステーブル”と書きましたが、この単語もフリップフロップの紹介の中で説明できたらと思います。

FFというとデジタル回路という感覚をお持ちの方も多いと思いますが、その中では非常に高度なアナログ的な動作が行われています。FFは信号の”1”,”0″を記憶することができるので、カウンターやシーケンス回路などあらゆるデジタル回路に使われています。

FFの基本はラッチ回路

FFの基本はラッチ(latch)回路です。単語の意味は“掛け金”で、一度カチッとさしたら抜けなくなる仕組みのことです。これを電気回路では”正帰還“をかけて実現しています。

図1

ラッチ回路の仕組み

一番簡単なラッチはOR回路の出力を入力に戻して正帰還をかける回路(図 1)です。ORなので一旦出力が”1“に成ってしまうとそのまま元にはもどらず、この状態のままとなります。実際に回路ではこのままでは使えないので元に戻すリセット回路(図 2の左)を追加します。

図2

SRラッチ

AND回路やOR回路で構成した回路と同じ動作をNAND回路で構成して、トランジスタ数を少なくした回路が図 2の右です。動作は図 3の様になります。この回路はSetとResetの動作をするのでSRラッチと呼んでいます。

図3

Dラッチ

このSRラッチを応用して入力したデータを保持する様にしたDラッチという回路(図 4)があります。

図4

この回路はSTB(ストローブ)信号が“1”の時間は、入力DINがそのまま出力OUTに現れて、STBを“0”にするとその状態を保持する回路です。しかし、STB=”1“のときは入力信号が変化すると出力も変化してしまい、いろいろと問題が発生します(したのだと思います)。

D-FF回路

そこで出てきたのが、D-FF回路(図 5)です(やっと本題にたどり着きました)。

図5

この回路はトランスファーゲートを使ったラッチ回路を2段直列につないだ構成になっていて、前段をマスターラッチ、後段をスレーブラッチと呼びます。この回路はクロックのエッジのみ動作し、一旦ラッチがかかると図 4のDラッチ回路みたいに入力が変化しても出力は変化しません。したがって、クロックのエッジの瞬間の入力状態を保持することができます(図 6)。これにSET,RESET機能をつけたものが最も多く使われているのではないでしょうか。

図6

次回はこのD-FFの動作についてもうちょっと詳しく紹介したいと思います。