AIモデルを開発する(AI×IoT トイレ見守り⑤) | ディー・クル―・テクノロジーズ ブログ | Page 3

bookmark_borderAIモデルを開発する(AI×IoT トイレ見守り⑤)

こんにちは!今日はAIモデル開発のデータ収集についてお話しします。

前回の記事はこちら

AIモデルの学習と評価には、どれだけのデータが集まるかが非常に重要です。成功するプロジェクトには、質の高い、大量かつ多様なデータが必要不可欠です。実際データはAIモデルそのものよりも重要だと言えます。

データ収集とアノテーションの重要性

データ収集やアノテーション(データラベリング)は、多くのリソースを必要とする手間のかかる作業です。そのため、効率的にデータ収集やアノテーションを行うために、使いやすいアプリケーションを活用したり、自動化、半自動化のプロセスを取り入れることが重要です。

データ収集とは?

2024年のTOFセンサー PoCでは、2つのTOFセンサーを使ってデータを収集しました。6週間のプロジェクト期間中に、実質的には2週間分の測距データが収集されたのです。実際のトイレを長期間利用するのは難しかったため、工場内の一室を借りて、実際のトイレのレイアウトに合わせた測距データ収集用のトイレを設置しました。

データ収集においては、多様性が鍵となる要素です。具体的には以下のような点に配慮しました:

部屋のレイアウトやTOFセンサーの設置位置のバリエーション

数種類の台を使ってTOFセンサーの距離を変えたり、トイレの設備のバリエーション(便座の位置、タンクの有無など)を変えたりしてバリエーションを収集しました。

トイレのバリエーション

便座閉じる、便座上げ、タンクありなど

さらに、様々な人の姿勢や位置を含む測距データの多様性(体格や身長の違い、立っている・歩いている状態、異なる服装による影響など)を担保すべく、人との姿勢や人数のバリエーションを収集しました。

人間の測距データバリエーション

  • 異なる体格や身長の人
  • 154cm->181cm
  • さまざまな姿勢や位置で立つ/歩く人
  • 異なる形や位置での転倒
  • 複数人の存在(2人いる時)
  • 異なる服装の人(赤外線反射と吸収)

人間以外の測距データバリエーション

  • 靴、ブロック、バッグ等が床に置かれた状態

アノテーションについて

データ収集とアノテーションは時間と人手を要する作業です。そこで、時間短縮を目指し、データ収集プロセスを設計しました。データの収集と解析を同時に実施できるように工夫しています。

アノテーションの入力方法

Bluetooth キーバッド

Bluetoothキーパッドを利用して、データ収集アプリケーションをリアルタイムで制御しました。これにより、ほとんどのデータ収集作業を一人で行うことが可能になり、2人分のデータ収集でも2人だけで対応できるようになりました。

データラベル設定

データラベルには以下の情報が含まれます。 

  1. 人数 
  2. 人の状態(転倒または正常) 
  3. 人が存在するエリア(ゾーン)
人数と人の状態
  上から見てA~Fの6つのエリア(ゾーン)が設定されています。

AIモデル評価とは?

学習用データと評価用データを分ける

データは2つの部分に分けられます。1つは学習用、もう1つは評価用です。

データは学習用と評価用に分けられます。学習用データセットは評価データとは独立させる必要があります。この独立性により、さまざまな環境でもAIが正確に状態を認識できるかをテストできます。

AIモデル評価

今回作成したAIモデルは、評価データに対して良好な性能を示しましたが、100%の精度には達していません。

これは、転倒と立っている状態の間に明確な境界がない場合があるためです。また、このセンサーの課題として、人と大きな物体を区別できない点もあります。

PoC評価の実施

AIモデルも完成したので、実際の現場での対応能力をテストしました。実験の様子を撮影した動画もあるので、ぜひご覧ください。

実験のため、動画で私がいろいろな動きを試しています。また2人でトイレに入った想定で、AIモデル評価の実験した時の様子がわかる動画もアップしています。

1人で計測した時の動画
2人で計測した時の動画

アプリでは、無人の場合は青、正常な状態は緑、異常な状態は赤で表示しました。

トイレでの人の動きに連動してアプリ画面の色が変わります。無人、1人立っている、2人立っている、などの状態をAIがそれぞれしっかりと検出しました。

さらに、2人で居るときには、うち1人が立っていて1人が転倒している場合は黄色(注意)で示しました。これは、もし看護師と患者が2人同時に居る場合、看護師がサポートできるので即レッド(危険)ではない状態もあると考えたためです。実際のケースではAIだけの判断ではなく、看護師の携帯電話に電話するなど別のサポート手段を取る方法も考えられます。

AIモデル評価では2つの問題を指摘しましたが、実際のPoCにおけるAIの判定結果は有望でした。私の作ったAIモデルはトイレ部屋のレイアウト(建具の配置など)の違いにも対応できていました。
つまり、PoCは成功です!

いかがでしたか? さあ、次回のブログでは以下の内容について議論します。

  1. システムの改善点
  2. システムのIoT MCUへの移植
  3. その他…

このPoCを実用的な商用製品へと発展させることを目指します。お楽しみに。

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無人のTOFセンサー画像とリアルタイムのTOFセンサー画像を比較することで、人の位置や状態を判断できるのであれば、AIも同様にそれを判断できるはずです。この考えを基に、シンプルなAIモデルを開発しました。

前回の記事はこちら

AIモデルの仕組み

このAIモデルは、以下の3つの状態を検出できるように設計されています。

  • 空の個室 – TOFセンサーの測距値から人が存在しないことを検出し、トイレが使用されていないことを示します。
  • 使用中の個室 – TOFセンサーの測距値から立っているまたは座っている人を検出し、トイレが使用中であることを把握します。
  • 転倒した人 – TOFセンサーの測距値から床に倒れている状態を検出し、緊急事態であることを示します。これは迅速な対応を必要とします。

さらに、より高度なケースとして、トイレに座ったまま体調不良になった場合などには、タイムアウト検出機能を設けました。具体的には、「トイレに座ったまま15分以上動きがない」といった条件でこの異常を検知し、見守りアラートを発することが可能です。

PoCにおけるAIモデルの構成図

今回のAIモデル開発は非常にシンプルなものに徹しました。以下にPoCにおけるAIモデルの構成図を示します。

AIモデルの入力(左端)

このモデルには、以下の2つの入力があります。

  1. リアルタイムのTOF画像 ‐ 状態(立っている、座っている)を示す画像。
  2. 無人のTOF画像 – トイレが空いている状態を示す画像。

AIモデルの構成(中央)

このAIモデルは、次の2つのパートから成っています。

  1. 特徴 抽出パート – 画像から特徴情報を抽出します。
  2. 判断 パート – 抽出された特徴情報をもとに状態を判断します。

AIモデルの出力(右端)

また、出力は下記の3つです。

  1. 転倒状態の合計人数 – 床に倒れている人の数。
  2. 正常な状態の合計人数 – 立っているまたは座っている人の数。
  3. 検出された合計人数 – 検出された全ての人の数。

AI モデル学習を実行する

AIモデルは教師あり学習を用いて学習されます。モデルを学習させるためには、入力データと出力データの2種類のデータが必要です。教師あり学習とは、正解を逐次教えることで学習を行う方法です。

  1. 入力TOFデータ – TOFセンサーの測距画像データ。
  2. ラベル(出力)– 出力データとして、検出された合計人数、正常な状態の合計人数、転倒状態の合計人数を使用します。

AIモデルが学習するステップは?

 AIモデルの学習ステップは以下の通りです。

  1. TOFセンサーの測距画像をAIモデルに入力し、AIモデルの判断結果を正解データと比較します。
  2. AIモデルを更新し、正解に近い判断ができるように調整します。。

このように、プロセスはシンプルなのですが、賢いAIモデルを生み出すためにはこのプロセスになんと、数万枚の画像「データ」とそれ以上の反復学習が必要になる場合があります!

実用的なAIソリューションを作ることは挑戦ですが、最大の課題はAIモデルそのものではなく、「データ」です。

次回は、私がどのようにしてトイレのためのAI学習用「データ」を収集したのか、その方法についてお聞かせいたします。

bookmark_border2025お花見

毎年恒例!ディー・クルーのお花見!

皆さん、ディー・クルーのお花見がやってきましたよ!🌸 今年もこの楽しい行事が行われることに、私たちのワクワク感は最高潮です。金曜日の朝は大雨だったため、「今年はどうなるのかな?」とドキドキしましたが、なんと、20年間で開催できなかったのはたった1回だけ!毎年、イベントの日はなぜか天候に恵まれているから、雨天延期なんて考えないのが私たちの社風です。

さて、予想通りと言うべきか、昼前には太陽が顔を出してくれました!気温もどんどん上昇し、まるで初夏のような心地よい陽気に。どうやら、この暖かさが桜にも影響したのか、朝のつぼみたちがいつの間にか、宴会が始まる頃には見事な7部咲きに。🌼

この美しい桜のもと、みんなで楽しむお花見は、暖かくて楽しいひとときになりました!差し入れで頂いた美味しい酒と貴重などら焼き “セシボン”を楽しみながら、仲間たちとの笑い声が響く中、春の訪れを心から楽しみました。来年もまた、この素敵な瞬間を一緒に過ごせますように!