ディー・クルー・テクノロジーズ Blog

bookmark_border反射(1)

今回は“反射”について話してみたいと思います。

このネタは<インピーダンスマッチング>でもお話しましたが、そのときは感覚的な説明をさせてもらったので、今回は少し技術的に説明をしたいと思います。

インピーダンス整合とは?

“インピーダンス整合”とか“インピーダンスマッチング”と言う単語は高周波回路を設計した人なら一度は聞いたことがあると思います。整合とは“整い合う”なので、どことどこのインピーダンスが整うのかというと、信号源インピーダンスと伝送路の特性インピーダンスが同じであること、また、伝送路の特性インピーダンスと受信機の入力インピーダンス(終端抵抗とも言います)が同じであることを“インピーダンスが整合する”といいます。

伝送路の特性インピーダンスって何かという辺りから始めたいと思います。

伝送路の特性インピーダンスとは?

Wikipediaよれば、

『特性インピーダンスは、一様な伝送路を用いて電気エネルギーを伝達するときに伝送路上に発生する電圧と電流の比率。』

さらに、

『単位長さあたりのインダクタンスがLの電気伝導体と、単位長さあたりの静電容量がCの絶縁体を組み合わせた損失のない均一な伝送路の特性インピーダンスZ0は次式で表される。』

と書いてあります。簡単に言うと・・・

同軸やストリップラインはインダクタとコンデンサの組み合わせで出来ていて、その比率が特性インピーダンスになります。

特性インピーダンス50Ωの同軸にデジタルマルチメータを当てて抵抗を測定しても、どこにも50Ωは有りません(同軸の芯線の端と端を測定しても50Ωになりません)。

代表的な伝送路の特性インピーダンスを形状から求める計算式を下記にまとめました。

図1

なお、式の中のεrは比誘電率で使う材料で決まります。

インピーダンス50Ωの伝送路に信号を入れた時の波形

特性インピーダンスが(例えば)50Ωの伝送路に信号を入れると、どんな波形になるかを確認してみましょう。

図2

信号源V0は出力インピーダンスを可変できるように抵抗R1をつけています。伝送路T0~T3は中間の波形も観測できるように4分割にしました。

図3

信号源インピーダンスR1=50Ω、終端抵抗R0=50Ωの状態で、High幅が2nsecのパルス信号を入力した結果です。ストリップラインの特性インピーダンスZo=50Ωで、その長さは200cmです。(注意:長さが200cmのストリップラインに出会ったことはないですが、ここではオーバーに表現するために意図的に長くしました)

信号源V0から出力したパルスがR1を通過してストリップラインを伝播して、終端側端子Vout(青)には15nsecに波形が到達していることが分かります。

終端抵抗を外した時の変化

続いて終端抵抗R0を外して(R0=50GΩ)みましょう。

図4

終端抵抗が特性インピーダンスとずれたため反射が発生し、信号源側に反射波が伝播していきます。また終端抵抗がなくなった分、終端側の振幅Voutが2倍になっています。しかし、不思議なことにストリップラインの入力Vinやストリップラインの中を通過していく波形V1~V3に振幅は半分のままです。半分と成っているのが気になるので、信号源側の抵抗R1を50Ωからずらしてみましょう

抵抗とストリップラインが抵抗分割を形成する不思議

図5

上の図は信号源側の抵抗R1=40Ωとした結果です。ストリップライン入力電圧Vinが図 4より少し高くなっているのが分かるでしょうか? 信号源V0の出力Vsを抵抗R1とストリップラインが抵抗分割してVinを作っているのです。普通の抵抗とストリップラインは異質なものなのに、これらが抵抗分割の様に電圧を作っている事が私には驚きです。

信号源側の抵抗R1が特性インピーダンスと異なるので、反射波はふたたび抵抗R1で反射し、進行波としてストリップラインの中にはいって行きます。抵抗R1を40オームとした場合はGNDより下に進行波が発生します(図 5参照)が、抵抗R1を60Ωとした場合はGNDより上に進行波が発生します(図 6参照)

エネルギー減衰しない反射波により、電源電圧を超えた電圧が発生する

それでは、信号源側の抵抗R1=1Ω、終端抵抗R0=50Gの場合はどの様になるかと言うと・・・

図7

終端側のVoutには+6Vや-6Vが発生する事に成ります。電源電圧=3.3Vなのになぜ?

波は反射するとエネルギーが減衰しないので、いつまでも反射を繰り返します。その結果、電源電圧を超えた電圧やGND以下の電圧が発生することになります。

この端子にもしもLSIなどの最大定格が低いデバイスが繋がっていたら・・・LSIが壊れたと騒ぐこととに成ってしまいます。

次回も反射と格闘してみたいと思います。

bookmark_border社員歓迎会

先日、この秋に新しくわが社にJOINした方々3名の歓迎会を催しました。

わが社の宴会でいつもお世話になっている仲町台駅すぐのイタリアン、ラ・パッパ様を貸切りさせていただきました。(スタップの方々、いつもありがとうございます!)

ラ・パッパ様の名物はピザとナポリタンスパゲッティ。おいしすぎておかわりが来てもすぐにお皿がからっぽになる人気ぶりだったのでうっかりお写真は撮れませんでした(笑)

普段オフィスの机では静かにパソコンや機材に向き合って仕事をしている面々ですが、こうした会社イベントになると、ごらんの通り一人ひとりが次々に話相手を変えながら、わいわいがやがや積極的にコミュニケーションを楽しむので、あっという間に時間が過ぎていきます。途中D-CLUE好例の余興(大変盛り上がります!)を挟みながら、お腹も心もたっぷりと満たしてとてもにぎやかな夜を共に過ごすことができました。

お店の皆様と社員によるハートフルな歓迎で、JOINしたメンバーもD-CLUEの面白さを体感いただけたかな、と思います。

bookmark_borderハイルドライバー方式の振動子をツイータに搭載。D-CLUEオリジナル ハイレゾスピーカを展示

ハイルドライバー式スピーカセット
シリンダー型ハイレゾスピーカ。中央はメディア再生用アンプ。

今や音楽視聴はデジタルが当たり前という時代ですが、逆にアナログレコードが再ブームで非常に良く売れているという話をよく耳にします。その理由はいろいろあるようですが、1つには、デジタル音源でカットしている超音波領域が再生でき、これが心地よいと思う人が増えたこともあるようです。

これは、近年登場したハイレゾオーディオの特長とも共通します。

今回は、そんなハイレゾ音源が再生でき、当時国産スピーカーでは存在していなかったハイルドライバー(AMT(Air Motion Transformer)とも言います)方式を採用した弊社オリジナルスピーカーセットについてD-CLUEエンジニアの渡辺さんにお伺いしました。

渡辺さんは回路設計エンジニアでありながら、趣味でもうすぐ50年になるオーディオに関する幅広い知見がある方で、オーディオ機器や電子楽器の開発者に対して様々な知見を提供してこられました。

ハイルドライバー方式(Heil Driver)で独自開発

D-CLUEが2017年に開発したこのスピーカーは、弊社に参画する前の当時の渡辺さんが、当時国内メーカが採用していなかったハイルドライバー方式として独自開発していたツイータを、D-CLUEが当時の自治体ベンチャー補助金を得ながら、共同でスピーカーに仕立てたものです。

DCT渡辺さん

D-CLUEオリジナル ハイレゾスピーカーの特長

音量や生産効率を重視した当時主流のコーン型を採用したスピ―カーと違いハイルドライバー方式を採用した本スピーカには以下のような特長があります。

  • 一般的なスピーカーにみられるお椀のような振動子(音の発生源)とちがい、薄くて軽いフィルムを蛇腹状にした特殊な振動子をマウントしています。
  • 打楽器の音抜けが良く、中高域の立ち上がりも素早い。例えばバイオリンのような弦楽器や鳥のさえずりなど繊細かつリアルな音源をくっきりと鮮明に再現します。
  • 平面波という、中高音域の音が均一遠くまで同じように出せるという特長があります。均一で減衰の少ない再生音が、演奏の奥行き感と臨場感をもたらし、可聴位置を選ばない360度立体音場再生を可能にします。

ハイレゾはさらに心身をリラックスさせる効果もあるそうで、大学研究機関と一緒に当社のスピーカーを使って検証実験も行われたそうです。

ツイータ部。スリット内に蛇腹状のハイルドライバー型振動子が見える

大手オーディオメーカー視聴会での評価

「先ず音を聞くと打楽器のリアルさに誰もが一番気が付くと思います」と語ってくれた渡辺さん。

私も実際に楽器演奏のハイレゾ音源を聞いてみました。ドラム音がクリアに耳に入ってきますし、弦楽器は力強く伸びがあります。打楽器・高音域が得意という渡辺さんの言う通りでした。雨上がりの山の自然音源に変えてみると、木の葉から滴る水滴のパラパラという音は打楽器のような粒立ち。小鳥の声は本当に頭上でさえずっているようで、音の素人の私でも強いリアル感、臨場感を感じました。

実際に当時の音響メーカー何社かに対し、実機のプレゼンテーションを行ったそうです。その担当者さん達の評価についても教えてくれました。

  •  バイオリンの音色の立ち上がりが良い。
  •  打楽器の音(と仕上がり)が素晴らしいです。
  •  ギターの高音が良く、スピーカー素材のカラレーションが良い。
  •  現在主流となっているツイーターの金属的な音がしない。
  •  素材の泣きのような音が一切しない。癖がなく素直に音が出ている
  •  スピーカーの素材感を感じさせない、自然な音がする。
  •  再生音の情報量がとても多い。

私も聞いてみて納得しましたが、その当時のオーディオのプロの方々の客観的な評価も素晴らしかったのですね。

仕様概要

本スピーカーの仕様概要をまとめました。

形式:2WAY シリンダー型バスレフ
中高音域:コンパクト型ハイルドライバー
低音域 :8cmコーン型ウーファー
出力音圧レベル:85dB/W (1m)
周波数帯域:70Hz~50KHz(-10dB)
クロスオーバー周波数:2KHz

弊社展示ルームにてリスニング可能

このほど渡辺さんに実機を調整いただいたあと、現在弊社の展示ルームに設置。再生デモをお楽しみいただけるようにしました。弊社にお越しの際はぜひお試しください。