ディー・クルー・テクノロジーズ Blog

インピーダンスマッチング

D-CLUEには大きく分けて3分野のエンジニアが在籍しています。それはアナログデジタルファームの3分野です。
代表の石川は、D-CLUEを創立する時から、この異なる3分野のエンジニアを集めて会社を創りました。この異なる分野のエンジニアがそれぞれの分野の目線から、同じ問題に取組み、団結と「合わせミソ」で幾多の難題を解決してました。

異なる分野のエンジニアが一つの仕事に団結して取り組むためには、相手の分野の事を深くは理解はできなくても、ある程度、感覚的に分かっている事が必要なのではないかと思います。
私はアナログのエンジニアですが、アナログだけを分かっていれば済むかと言うと、そうでは無く、
デジタル回路が何をしているのか、ファームはどう制御しているか等をある程度分かっていないと、
団結して一つの仕事に取組めないのでは無いかと思います。

そんな背景もあり、今回のブログのテーマは、「アナログ回路を分かり安く説明して、デジタルやファームのエンジニアに感覚的に知ってもらうこと」です。

初めての方もいらっしゃるかも知れないので、簡単な自己紹介をさせて頂きます。

私は美斉津と申します。

1986年に電気工学科を卒業したのですが、アナログ電子回路は避けて通って来たので、卒論は、今となっては名前すら見る事がなくなった「FORTRAN」を使った光線追跡プログラムに関するものでした。そんな学生でしたので、アナログの世界には会社に入ってから出会いました。
そして、アナログの世界の魅力に取り付かれて、気が付けば長い年月が過ぎていました。

インピーダンスマッチングとは

今回は、「インピーダンスマッチング」について触れたいと思います。

デジタル回路の動作速度が速くなると、今まで経験した事のない問題に直面します。
なぜか信号が化ける、書いたはずのデータが書けてない、時々誤動作する、などの頭の痛い問題です。
その原因のひとつとして「インピーダンスマッチング」があげられます。
RFなどの高周波が絡む仕事をしている方にとっては馴染みの深い単語ですが、デジタル回路を中心に仕事をされている方には、非常に分かり難いのではないかと思います。
学術的には「伝送路の特性インピーダンスと終端抵抗のインピーダンスが整合している事」と書いてあるのですが・・・何を言っているのか理解し難いものがあります。

インピーダンス不整合とは

インピーダンスがマッチングしないと・・・何が問題なのか?

インピーダンスが整合(つまり一致)していないと何が起こるかと言うと、「反射」が起こります。
つまり、配線やプリント版のパターンを通ってきた大事な信号が反射してしまい、エラーや誤動作を引き起こします。

なぜ反射が起きるのか

それでは、なぜ反射するかというと・・・

しっかりと説明するには難しい計算式を沢山使わないといけないので、簡単な例で説明しようと思います。長いロープ(出来れば柔らかいほうがいいです)を用意して床に一直線に伸ばして置きます。
片方を誰かに足で踏んでもらっておいて、反対側の端を持って”1”を伝えるつもりで勢いよく持ち上げてすぐ下げます。そうすると、ロープに”山”ができ、これが反対の端に向かって走って行くのが見えると思います。反対の端に届いた時に何が起きるかよく観察してください。
“小さい山”がちょっと戻ってきませんでしたか? これが”反射”です。

今まで、ロープを伝ってきた信号の”山”が急にロープが無くなってしまうので、行き場を失って戻ってきたのです。つまり、今まで信号を伝えてきた媒体が急に変わり、片側には山があるのに、もう片側は平たんな状態になってしまい、“連続である”という自然現象の原則と矛盾します。この矛盾を解消するために、反対方向の山が発生します。これが反射が生じる理由です。
この現象は、電気信号だけではなく”音”や”光”でも一緒です。今まで飛んできた媒体の空気とは違う山に、声が当たって反射したのが”やまびこ”です。

反射を発生させないために必要なこと

では、反射を発生させないようにするには・・・

媒体が変わったと気づかせないように、つまり、ロープが切れていないように見せればいいのです。
具体的には、ロープの端を足で踏んで固定しないで動くようにしてやれば、反射は起きなくなります(と思います)。
アナログ回路設計は難しいとか、高速伝送は理解しにくいとか良く言われます。
でも、アナログ回路は我々身の回りに「自然」という非常に優れたお手本を真似をしているだけなのでは? スケール(時間軸を含めて)が違うだけでないか?と感じる事がよくあります。
“アナログ”の語源は、英語のanalogy(類似性、類似学)で、”類似している”から連続していると言う意味と変化したと聞きます。

ロープのように”連続”した信号を扱うアナログ回路設計

つまり、連続した信号を扱うからアナログ回路なのですが、連続しているのは信号だけではなく、電子回路で起きている現象が我々の回りの自然と密接な関係にあり、まさに連続しているのでは?と感じている今日この頃です。感覚的な説明になってしまいましたが、次回は具体的な回路を使い、波形の歪み方などを含めて、インピーダンスマッチングを説明したいと思います。

(2008/1/8 弊社 匠ブログ記事より加筆転載)