特定用途向け集積回路(ASIC)は、現代の電子機器の進化において不可欠な要素です。スマートフォンやカメラ、自動車の電子制御ユニットに至るまで、ASICは高性能かつ効率的な動作を実現するために設計されています。このガイドでは、ASIC開発の各ステップを詳細に解説し、設計プロセスを成功させるための重要なポイントを紹介します。ASICの設計と製造についての理解を深め、最適なカスタムLSIを手に入れましょう。
ASIC(Application-Specific Integrated Circuit)は、特定の機能や用途に特化して設計された集積回路のことを指します。通常、汎用プロセッサとは異なり、専用のタスクを効率的に実行するために設計されています。また、ASICはシリコン上に実装されるため、高集積度で高性能なチップを実現できるのが特長です。例えば、スマートフォンの中には、画像処理用ASICが搭載されており、リアルタイムでの高精度な画像処理を可能にしています。
ASICの開発は、複雑で多岐にわたるプロセスですが、以下のステップに分けて進行します。
全ての開発プロセスは、明確な仕様を作成することから始まります。ここでは、プロジェクトの目標、必要な機能、性能要件、消費電力の制限など、あらゆる設計条件を詳細に規定します。仕様の作成は、設計の品質と成功を左右するため、非常に重要なステップとなります。
設計プロセスは、論理設計と物理設計の二段階で進行します。論理設計では、設計ツールを用いて回路設計を行い、意図した機能を実現するためのロジックを構築します。次に、物理設計では、実際のシリコン上に回路を配置し、配線の接続を行います。CAD(コンピューター支援設計)ツールがこのプロセスを支援し、最適なレイアウトを生成します。
設計した回路が期待通りに動作することを確認するため、シミュレーションを行います。RTL(Register Transfer Level)シミュレーションや事後シミュレーションを通じて、設計の誤りを検出し、修正を行います。このフェーズでは、複数の動作条件や環境下での検証が重要です。
シミュレーションが成功したら、次は実際にシリコンプロトタイピングを行います。FPGA(Field-Programmable Gate Array)を用いたプロトタイピングは、設計のリアルタイムな動作を評価するのに適しています。この段階でのテストと評価によって、最終製品のパフォーマンスを確実にすることができます。
設計とプロトタイピングを経たASICは、テストフェーズに移行します。製造されたASICをテストし、仕様に基づいて正確に動作するかを確認します。ここでのテストにより、量産の準備が整います。細部にわたるテストと検証を行うことで、製品の信頼性を保証します。
特定用途向けLSI設計/開発に特化した企業として、ディー・クルー・テクノロジーズは、医療機器からAR技術まで幅広い分野でその専門性を発揮しています。例えば、当社の「ワイヤレス超音波プローブ用LSI」や「最先端超音波診断装置用LSI」は、超音波診断の精度と効率を飛躍的に向上させています。また、ARグラスにおいても、透過型液晶(LCOS)を制御する「AR向け液晶ドライバーASIC」により、ユーザー体験を一層豊かにしています。 これらの製品はすべて、用途特化型集積回路(ASIC)として設計されており、それぞれの装置やシステムにとって不可欠なキーデバイスとなっています。また、性能競争の激しい製品分野において、当社のアナログフロントエンドLSIは、消費電力を大幅に削減しながら、高速データ転送を実現。競争力確保に貢献しています。
さらにデジタル・アナログを融合したMIXED SIGNAL回路における長年にわたる経験と独自の技術開発により、当社は高度なLSI設計/開発を実現し、多くの事業分野で高い評価を得ています。どんなに厳しい設計条件であっても、柔軟に対応し、お客様のニーズに応えることができるエンジニアが在籍することが当社の強みです。
●事例1 「ワイヤレス超音波プローブ用 LSI」
課題
健康診断などで使われ“エコー”と呼ばれる超音波診断装置は、手で持つプローブと診断装置本体は太いケーブルで接続されています。このケーブルが邪魔なので無線化したいと言うニーズがあり、開発したLSIになります。
無線化を実現するためにはバッテリーで動作する必要があり、低消費電力化はもちろん、プローブを手で持ちやすい大きさにするための小型化がLSI開発の課題となります。
解決策
保有しているアナログ設計技術とデジタル設計技術との融合により、従来技術では不可能と言われていた低消費電力化を実現しました。また、デジタル回路とアナログ回路の間のクロストークを抑える細心のレイアウト設計とカスタムWCSP(Wafer level Chip Scale Package)の開発を行い、目標サイズを実現しています。
本LSIは医療用途だけではなく、非破壊検査など超音波技術を活用する装置に広くお使いいただけます。
●事例2 「AR向け透過型液晶(LCOS)制御ASIC」
課題
お客様は新規開発の透過型液晶(LCOS)を搭載したARグラスの開発を計画していました。
そのARグラスを実現するためには、必要な画像処理機能を搭載したLCOSを駆動するLSIが必須であり、開発依頼を頂きました。単に必要な機能を搭載するだけではなく、ARグラスに搭載可能な形状で実現することが課題でした。
解決策
目標のサイズや形状を実現するためには、デジタル回路の高度な配置配線(レイアウト設計)技術が必要になります。この技術を基に必要な画像処理機能(ガンマ補正、クロッピング、上下左右反転、拡大縮小など)を全て搭載し、目標サイズと寸法を実現しました。
ASIC設計のアウトソーシングはディー・クルー・テクノロジーズにお任せください。
これまで培った技術を集約し、貴社の課題解決に貢献します。